植物性の原材料で肉や乳製品に近い食感・風味を再現する「プラントベース食品」の新商品開発を検討する食品メーカー・外食チェーンが増えています。本記事では、通常の食品開発委託との違い、OEM委託先を選ぶ際の確認事項、試作から量産までの注意点を実務目線で整理します。
プラントベース食品の商品開発委託|OEM選びと試作・量産化のポイント
プラントベース食品の商品開発が今注目される背景
健康志向やサステナビリティ意識の高まりを背景に、プラントベース食品の市場は拡大を続けています。日本国内のプラントベース食品市場は2021年の約340億円から2025年には約730億円規模に成長すると見込まれており、年平均成長率(CAGR)は約18%とされています(※1)。植物性ミルクの領域でも世界的な拡大が続いており、乳業関連団体も市場動向を注視する対象として取り上げています(※2)。
代替肉(植物由来肉)市場に限定した調査でも、今後数年にわたり年率10%台後半の成長が予測されており(※3)、コンビニエンスストアやファミリーレストランのメニューにもプラントベース商品が定着しつつあります。食品メーカーにとっては、既存の畜産・酪農原料に依存しない商品ラインを持つことが、原材料調達リスクの分散にもつながる観点として注目されています。
通常の食品開発と何が違うのか
プラントベース食品の商品開発が通常の加工食品開発と異なる主なポイントは、原材料設計と食感再現の難易度です。
- 原材料の選定:大豆・えんどう豆・小麦グルテンなど、植物性たんぱく質源によって食感・風味・アレルゲン特性が大きく異なります。ターゲットとする食感(繊維感、ジューシーさなど)から逆算して原材料を選定する必要があります。
- 食感設計の技術力:肉や乳製品に近い食感を再現するには、押出成形(エクストルーダー)技術や乳化技術など、専門的な製造ノウハウが求められます。汎用的な食品OEMでは対応できない場合があります。
- 表示・訴求の設計:「植物性」「プラントベース」といった表示自体に統一的な法定基準はまだ整備されていない一方、アレルゲン表示や遺伝子組換え表示など既存の食品表示ルールは通常どおり適用されるため、誤認を招く表現がないか慎重な確認が必要です。
OEM委託先を選ぶ際に確認すべきポイント
一般的な食品OEM委託先の選定基準(実績確認、認証取得状況、試作から量産までの対応範囲など)に加えて、プラントベース食品特有の観点を確認することが重要です(※4)。
| 確認項目 | 通常の食品OEMで見る観点 | プラントベース食品で追加すべき観点 |
|---|---|---|
| 設備 | 一般的な加工・充填ライン | エクストルーダーなど食感形成に必要な専用設備の有無 |
| 実績 | 類似カテゴリーでの製造実績 | 植物性たんぱく質を用いた商品の開発・量産実績 |
| 原材料調達 | 主要原材料の安定調達力 | 植物性たんぱく質原料の調達ルートと価格変動への対応力 |
| 表示対応 | 一般的な食品表示への対応 | アレルゲン表示・遺伝子組換え表示など専門知識を要する表示への対応 |
食品OEM全般の選定基準について詳しくは食品OEM委託先の選び方でも解説していますが、プラントベース領域では特に「試作段階から量産設備を保有しているか」を確認することが、後述するスケールアップの失敗を避ける上で重要になります。
開発フェーズ別に見る注意点
試作フェーズ
試作段階では、複数の原材料配合パターンを比較しながら、目標とする食感・風味に近づけていきます。この段階で重要なのは、試作を担当するラボ設備と、実際の量産ラインの製造条件(温度・圧力・撹拌速度など)に乖離がないかを確認しておくことです。小ロットでは再現できた食感が、量産ラインでは再現できないケースは珍しくありません(※5)。
量産フェーズ
量産移行時には、原材料ロットごとのばらつきが食感・風味に影響しやすいプラントベース食品特有の課題が顕在化します。量産開始前に複数ロットでの試験製造を行い、品質のばらつきが許容範囲に収まるかを検証しておくことが望ましいです。
継続フェーズ
継続的な製造段階では、主原料(大豆たんぱく、えんどう豆たんぱくなど)の国際相場変動が原価に直結しやすい点に注意が必要です。委託先が複数の調達ルートを持っているか、価格変動時の原価改定ルールをあらかじめ契約に盛り込んでおくことがリスク低減につながります。
コストと開発期間の目安
プラントベース食品の商品開発は、原材料の汎用性と目標とする食感の再現度によって費用・期間が大きく変わります。既に確立された配合(大豆ミートを使ったハンバーグ状商品など)をベースに味付け・成形をアレンジする場合は、通常の加工食品開発と近い期間・費用感(試作から発売まで数か月程度)で進められることが多い一方、独自の食感を一から開発する場合は試作の反復回数が増え、半年〜1年程度の開発期間を見込んでおく必要があります。
よくある失敗と回避策
- 試作と量産の設備差を確認せずに進めてしまう:試作段階から量産設備を保有する委託先を選ぶか、早期にスケールアップ試験を行うことで回避できます。
- 表示・訴求のチェックを後回しにする:商品コンセプト確定と同時に、アレルゲン表示・遺伝子組換え表示・景品表示法上の懸念点を確認しておくことで、発売直前の表示修正によるスケジュール遅延を防げます。
- 原材料の調達リスクを見落とす:植物性たんぱく質原料は国際相場の影響を受けやすいため、単一の調達ルートに依存しない委託先選定が重要です。
まとめ
プラントベース食品の商品開発は、拡大を続ける市場を背景に食品メーカー・外食チェーンにとって有力な選択肢になっていますが、原材料選定・食感再現・表示対応という通常の食品開発とは異なる論点への理解が欠かせません。委託先選定の段階で、試作から量産までを一貫して対応できる設備・実績を持つパートナーを見極めることが、開発の手戻りを防ぐ最大のポイントです。
参考資料
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