シェフ監修や専門家監修の商品を発売したものの、「話題にはなったが効果があったのか分からない」まま次の企画判断に進めずにいる商品開発担当者は少なくありません。監修商品の効果は発売直後の話題化・購買行動・ブランド資産への蓄積という3つのフェーズに分けて、それぞれ異なるKPIで測定することで、次の監修契約や商品企画の判断材料にできます。
監修商品の効果測定はどう行う?トライアル率・リピート率で見るKPI設計
監修商品の効果測定が難しい理由
監修商品の効果測定が通常の新商品以上に難しいのは、評価すべき対象が「商品そのものの売上」と「監修による付加価値」の2層に分かれるためです。監修料やロイヤリティという追加コストを払っている以上、単純な売上高だけでなく、監修がなかった場合と比べてどれだけ上乗せ効果があったかを示す必要があります。
また、監修商品は発売直後にメディア露出やSNSでの話題化が起きやすい一方で、話題性と実際の購買行動が必ずしも連動しない点も評価を難しくします。IPコラボやタイアップ企画が単発の話題で終わり、継続的な収益につながらない失敗パターンとして、発売直後の盛り上がりに安心してしまい、購入後の顧客との接点設計や価値提案が不足するケースが指摘されています(※1)。監修商品でも同様に、「話題になった」こと自体をゴールにしてしまうと、次の企画判断を誤ります。
効果測定の全体設計:KGIとKPIを分けて考える
効果測定を設計する際は、最終的な事業目標であるKGI(例:監修商品単体での売上目標、既存ラインの売上押し上げ目標)と、そこに至る中間指標であるKPIを分けて整理することが基本です。売上高は「客数(購入者数)×客単価×購入頻度」に分解できるため、どの要素が監修による効果で伸びているのかをKPIレベルで追えるようにしておきます(※2)。
監修商品の場合、KPIは大きく次の3フェーズに分けて設計すると整理しやすくなります。
| フェーズ | 主なKPI | 測定の目的 |
|---|---|---|
| 話題化(発売〜2週間) | メディア掲載件数、SNS言及数、指名検索数 | 認知の広がりを把握する |
| 購買行動(発売〜3カ月) | トライアル率、初速売上、店頭露出との相関 | 話題を購買に転換できているか確認する |
| 定着(3カ月以降) | リピート率、定番品化の可否、カテゴリ内シェア | 商品自体の実力を判断する |
フェーズ1:発売直後の「話題化」を測るKPI
発売直後は、メディア掲載件数・リーチ・SNS言及数といった認知フェーズの指標、指名検索数やSNSエンゲージメントといった検討フェーズの指標、UGC(ユーザー投稿コンテンツ)投稿数やレビュー数といった口コミ形成フェーズの指標を、段階ごとに分けて見ることが推奨されています(※3)。
UGCは話題化の副産物として扱われがちですが、ECサイトの商品詳細ページにUGCを掲載すると、コンバージョン率が20〜30%改善するケースが報告されており(※4)、監修者の発信やユーザーの投稿を店頭POPやECページに二次活用する設計まで含めてKPIに組み込むと、話題化を購買に接続しやすくなります。SNS上のハッシュタグ使用回数や投稿件数を定点観測し、発売1週間・1カ月時点での推移を比較できるようにしておくと、話題化が一過性だったのか継続しているのかを判断しやすくなります。
フェーズ2:購買行動を測るKPI(トライアル率・リピート率)
話題化の次に見るべきは、実際に購入が発生しているかを示すトライアル率と、継続購入につながっているかを示すリピート率です。トライアル率は期間内の来店者(または対象顧客)のうち、その商品を初めて購入した人の割合を指し、リピート率は購入者のうち期間内に2回以上購入した人の割合を指します(※5)。ID-POSデータが利用できる小売チャネルでは、この2指標を発売直後から継続的に追うことで、商品の定着度を定量的に把握できます。
一般的な食品カテゴリのリピート率の平均は40%前後とされています(※6)。監修商品のリピート率がこの水準を大きく下回る場合、話題性による初回購入(トライアル)は獲得できていても、商品自体の満足度や価格設定、販売チャネルの使い勝手に課題が残っている可能性があります。逆にリピート率が平均を上回っていれば、監修による話題化が一時的な効果にとどまらず、商品自体の支持につながっていると判断できる材料になります。
監修者の知名度や発信力に依存した企画になっていないかどうかを見極める上でも、トライアル率とリピート率を分けて見ることは有効です。トライアル率は監修者のファン層や知名度の影響を強く受けやすい一方、リピート率は商品そのものの品質・価格・使い勝手に左右される傾向があるため、両者の差が大きい場合は商品設計そのものを見直す必要があります。シェフ監修商品の作り方の段階から、味や価格帯の検証を丁寧に行っておくことが、リピート率の確保につながります。
フェーズ3:ブランド資産への蓄積を測るKPI
発売から3カ月以上が経過した段階では、単品の売上だけでなく、監修商品がブランド全体の資産としてどれだけ蓄積されたかを見る視点が必要です。具体的には、定番品化の判断材料となる継続売上の推移、カテゴリ内での売上シェアの変化、監修商品をきっかけに獲得した新規顧客が他の商品ラインへ波及しているかどうかなどが挙げられます。
この段階になると、監修者本人の知名度よりも商品自体のブランド力が売上を牽引しているケースが多くなります。著名シェフ監修のメリット・デメリットで整理したように、監修者のブランド力に依存しすぎた企画は、監修契約の終了とともに売上が落ち込むリスクがあるため、3カ月以降のKPIでは「監修者がいなくても売れる商品になっているか」という視点を持つことが重要です。
監修商品特有の論点:監修者要因をどう切り分けるか
効果測定の設計で最も難しいのが、監修者という要因の寄与分をどう切り分けるかという点です。完全な切り分けは困難ですが、実務上は次のような考え方で整理されることが多くなっています。
まず、監修がない場合に想定される売上の基準線を、既存の定番品の実績やカテゴリ平均値から設定します。次に、監修商品の実売上とこの基準線との差分を、監修による上乗せ効果とみなします。そのうえで、監修料・ロイヤリティの支払額と、上乗せ効果分の売上総利益を比較することで、投資回収がどの程度の期間で見込めるかを試算できます。費用面の基本的な考え方は商品監修を依頼するといくらかかる?でも整理しているとおり、固定報酬型・料率型のいずれであっても、この基準線との比較を行う前提で契約設計をしておくと、効果測定がしやすくなります。
効果測定の運用体制とタイミング
効果測定は一度きりで終わらせず、発売前・発売直後・1カ月後・3カ月後・半年後といった複数のタイミングで定点観測する体制を組んでおくことが望まれます。発売前には既存の定番品やカテゴリ平均をもとにした基準値を設定し、発売直後から1カ月はSNS言及数・指名検索数・トライアル率を週次で、3カ月以降はリピート率と定番化の可否を月次で確認するという運用が一つの目安になります。
測定に必要なデータ(ID-POSデータ、SNS分析ツール、指名検索数のレポートなど)は、監修契約を結ぶ前の段階で、どの部署がどのツールを使って収集するかを決めておくと、発売後にデータが揃わず効果測定ができないという事態を避けられます。あわせて、測定結果を次回の監修契約条件(ロイヤリティ料率や契約更新の可否)にどう反映するかという運用ルールも、監修契約書のひな形の検討と合わせて事前に整理しておくと、効果測定の結果を次の意思決定にスムーズにつなげられます。
まとめ
監修商品の効果測定は、発売直後の話題化・購買行動・ブランド資産への蓄積という3フェーズに分けてKPIを設計することが出発点になります。話題化はメディア掲載件数やSNS言及数、購買行動はトライアル率・リピート率、定着はカテゴリ内シェアや定番化の可否といった指標を、それぞれ適切なタイミングで測定することで、監修による上乗せ効果と商品自体の実力を切り分けて評価できます。測定の仕組みを契約前から合意し、次の監修契約や商品企画の判断に活かせる体制を整えておくことが重要です。
参考資料
FAQ