ハワイへの飲食店出店は日本人に人気の海外展開先だが、会社設立から酒類許可、ビザ取得まで必要な手続きが多く、着手前に全体像を把握できずに検討が止まる事業開発担当者は少なくない。本記事では、出店までに必要な許認可・登録の流れと、人件費・税制など運営コストの実務ポイントを、公的機関の公開情報をもとに解説する。
ハワイのレストラン出店ガイド|費用・許認可・ビザ取得の実務ポイント
ハワイ出店が注目される背景と市場の現状
ハワイは親日的な観光地として知られ、日本食への現地消費者・観光客双方の受容度が高いことから、飲食チェーンや食品メーカーの海外展開先として根強い人気がある。ハワイ州観光局の統計によれば、2026年3月にハワイを訪れた渡航者数は88万8,349人(クルーズ利用含む)にのぼり、このうち日本からの渡航者は6万7,014人であった(※1)。コロナ禍前と比較すると日本人観光客数の水準はまだ低いものの、年によっては前年同月比で二桁増となる月もあり、需要の底堅さは維持されている。
一方で、ハワイは米国本土や東京圏と比較しても不動産賃料の水準が高く、特にワイキキやアラモアナなど観光客の集積するエリアでは空き店舗が目立つほど賃料負担が重いことも指摘されている。出店エリアの選定にあたっては、観光客動線の良さと賃料負担のバランスを慎重に見極める必要がある。
出店までに必要な許認可・登録の全体像
ハワイで飲食店を運営するには、大きく分けて「事業体の登録」「税務登録」「食品営業許可」「酒類提供時のリカーライセンス」「現地に駐在する場合のビザ」という5つの手続きが必要になる。日本と異なり、これらは州・郡・連邦それぞれ管轄が分かれており、申請窓口も書式も異なる点に注意したい。とりわけリカーライセンスとビザの取得には長い準備期間が必要になるため、出店スケジュールを組む際は、店舗の内外装工事よりもむしろこれらの許認可取得を起点に逆算することが実務上のポイントとなる。
会社設立(DCCA登録)とGET(一般消費税)
ハワイで店舗を運営する事業体は、州のDCCA(Department of Commerce and Consumer Affairs、商務消費者保護局)に登録する必要がある。LLC(有限責任会社)として登録する場合、定款(Articles of Organization)の提出手数料は50ドル、迅速処理を希望する場合は追加で25ドルが必要となる。登録後も毎年15ドルの年次報告書(Annual Report)の提出が求められる(※2)。日本の商業登記と比較すると手数料自体は小さいが、外国法人の子会社として登記する場合は追加書類が必要になるため、現地の会計士・弁護士への相談を早い段階から進めておくとよい。
また、ハワイには日本の消費税に相当する「GET(General Excise Tax、一般消費税)」がある。小売・サービス業に適用される州の基本税率は4%だが、オアフ島(ホノルル市郡)では2007年から2030年まで郡独自の追加税率0.5%が上乗せされており、合計で4.5%の税率が適用される(※4)。GETは売上そのものに課税される仕組みのため、日本の消費税のように「預り金」として単純に転嫁できない点も、現地の税理士に事前確認しておくべき実務ポイントである。
保健局の食品営業許可とリカーライセンス
飲食店の営業には、ハワイ州保健局(DOH)食品安全部門が発行する食品営業許可(Food Establishment Permit)が必要になる。許可は島ごと(オアフ・ヒロ・コナ・マウイ/モロカイ・カウアイ)に申請窓口が分かれており、店舗の図面・調理工程の事前提出と現地査察を経て交付される。小規模店舗(延床面積約93平米以下)の場合、リスク区分に応じて許可手数料は100〜300ドル程度とされている(※7)。
酒類を提供する業態では、これに加えてリカーライセンス(酒類販売免許)の取得が必要になる。オアフ島の場合はホノルル市郡のリカー委員会(Liquor Commission)への申請となるが、審査プロセスは煩雑で、新規申請の場合は取得までに1年以上を要することも珍しくないとされる(※5)。開業までのリードタイムを短縮したい場合、既にリカーライセンスを保有する既存店舗を買収し、ライセンスごと事業を引き継ぐM&Aの形態を選択する事業者もいる(※5)。日本本社側の意思決定スピードとハワイ側の許認可取得スピードにギャップが生じやすいため、出店計画の初期段階からリカーライセンスの要否と取得方針を織り込んでおくことが望ましい。
駐在員・投資家として滞在するためのビザ
日本から駐在員を派遣して現地運営に関与する場合、多くの企業がE-2条約投資家ビザを利用する。E-2ビザの取得には事業への実質的な投資が要件となり、目安として25万〜30万ドル程度の投資額が求められることが多いとされる(※6)。投資家本人がビザを取得するケースのほか、管理職としての派遣を申請するケースもあり、その場合は飲食店運営における実務経験など追加の要件が課される(※6)。ビザの審査には一定の期間を要するため、店舗オープンの半年〜1年程度前には申請準備に着手しておくことが望ましい。
賃料・人件費など運営コストの実務ポイント
出店後の運営コストで特に負担が大きいのが人件費である。ハワイ州の最低賃金は段階的な引き上げが法律で定められており、2026年1月1日に時給16.00ドルへ引き上げられた。この上昇は2022年に成立した法律(Act 114)に基づく措置で、2028年1月には時給18.00ドルに達する予定である(※3)。観光客の集積するエリアの人気店では、人材確保のために最低賃金を上回る水準での採用が一般的になっており、日本の人件費水準を前提に収支計画を立てると、開業後にコストを過小評価してしまうリスクがある。
賃料についても、観光客動線の良いエリアほど坪単価・保証金ともに高水準になりやすく、契約更新時に賃料上乗せを求められるケースがあるとの指摘もある。人件費・賃料・GETという3つの固定費が日本の店舗運営と比べて重くなりやすい構造を理解したうえで、価格設定と客単価の計画を立てることが、ハワイ出店を継続的な黒字運営につなげる鍵となる。
出店先の市場選定という観点では、飲食店の海外進出ガイドで解説した進出形態の比較や、台湾出店にかかる費用完全ガイドで紹介した費用構造との比較検討も参考になるだろう。
まとめ
ハワイでの飲食店出店には、DCCAへの事業体登録、GET(合計4.5%)の税務登録、保健局の食品営業許可、酒類提供時のリカーライセンス、駐在員のビザ取得という複数の手続きが必要であり、特にリカーライセンスとビザは取得までに長期間を要する。人件費は最低賃金の段階的引き上げにより今後も上昇が見込まれるほか、観光エリアの賃料負担も重い。これらの許認可取得スケジュールと運営コスト構造を出店計画の初期段階から織り込み、必要であれば現地の会計士・弁護士・M&A仲介などの専門家と連携しながら準備を進めることが、ハワイ出店を成功させるポイントとなる。
参考資料
- ハワイ州観光局公式日本語サイト「2026年3月 ハワイ観光統計」
- Hawaii DCCA「Domestic Limited Liability Company」
- Governor Josh Green, M.D.「Hawaiʻi's Minimum Wage Increases to $16.00 on January 1」
- Hawaii Department of Taxation「County Surcharge on General Excise and Use Tax」
- GO法律事務所(hawaiinisumu.com)「ハワイのレストランビジネスに重要なリカーライセンス取得とM&Aのポイント」
- 米国B1/E1/E2ビザ申請サポートセンター「ハワイでE2ビザを取得して事業を始めるには?」
- Toast「Hawaii Food Licenses and Permits Restaurants Require」
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