食品メーカーや外食チェーンで新商品開発の体制を強化したいとき、「顧問契約で専門家を招くか」「正社員を採用して内製化するか」の二択で迷う担当者は多い。本記事では費用構造・得られる知見の違い・意思決定の判断基準を整理し、併用というハイブリッドな選択肢まで解説する。
商品開発は「顧問」と「正社員採用」どちらが良いか|費用と体制で比較する判断基準
商品開発の人材確保で「顧問」か「採用」かの選択に迫られる背景
食品業界では正社員の人手不足感が続いており、帝国データバンクの調査では2025年7月時点で正社員が「不足」していると回答した企業は50.8%にのぼる(※5)。商品開発職のように専門性が求められるポジションは母集団自体が薄く、公募をかけても応募が集まらない、あるいは即戦力の経験者と出会えないまま採用活動が長期化するケースが少なくない。
こうした状況で選択肢に上がるのが、外部の専門家と業務委託契約を結ぶ「顧問契約」だ。フルタイムで雇用するのではなく、月数回の稼働で知見だけを借りる形態のため、採用が難航している企業ほど検討の俎上に載りやすい。一方で、外部人材に頼り続けることには「社内にノウハウが残らない」という懸念もあり、結局どちらを選ぶべきかの判断軸を持たないまま議論が堂々巡りになりがちだ。
顧問契約と正社員採用、費用構造の違いを比較する
まず費用構造の違いを整理する。正社員採用では、給与に加えて社会保険料の会社負担分(おおむね給与の15%前後)、さらに人材紹介経由であれば紹介手数料が発生する。人材紹介の手数料相場は理論年収の30〜35%が一般的で、専門性の高いハイクラス人材では40〜50%程度になることもある(※1)。仮に理論年収600万円の商品開発担当者を紹介経由で採用すると、手数料だけで180万円〜210万円前後が初期コストとして発生する計算になる。
| 比較項目 | 顧問契約 | 正社員採用(紹介経由) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 契約書締結費用のみ(原則なし) | 紹介手数料:理論年収の30〜50%程度(※1) |
| 月額コストの目安 | 稼働日数・時間に応じた月額顧問料 | 月給+社会保険料会社負担分(給与の約15%) |
| 契約の柔軟性 | 契約期間・稼働頻度を都度見直しやすい | 雇用契約のため解除のハードルが高い |
| 知見の残り方 | 契約終了とともに知見も離れやすい | 退職しない限り社内に蓄積される |
| 稼働範囲 | 助言・壁打ち・レビューが中心になりやすい | 実務のオペレーションまで一貫して担える |
なお、人材紹介・人材派遣・再就職支援を合わせた人材ビジネス市場全体は2024年度に前年度比3.4%増の9兆7,962億円まで拡大しており(※2)、専門人材の獲得競争自体が年々激しくなっている。採用市場の競争が激化するほど、まず顧問契約で立ち上げを進め、体制が固まった段階で採用に切り替えるという時間差の使い分けが現実的な選択肢になる。
得られる知見の違い:外部の専門性か、内製化か
顧問契約の最大の利点は、契約した瞬間から即戦力の専門知見にアクセスできることだ。みらいワークスの調査では、外部プロ人材を活用したことがある大企業の割合は26.8%(前年比+5.4pt)で、活用効果としては「業務スピードの向上」を挙げる回答が約5割にのぼる(※3)。自社に不足している知見をゼロから育てるのではなく、既に持っている人材を機動的に借りることで、企画立ち上げまでのリードタイムを大きく短縮できる。
一方で、顧問はあくまで外部人材であるため、契約が終了すれば知見も社外へ持ち出されるのが原則だ。長期的に自社の競争力として知見を蓄積したいテーマ(例えば特定カテゴリーの継続的な新商品開発体制の構築)には、時間はかかっても正社員採用による内製化のほうが向いている。
中小規模の外食チェーンでも進む外部人材活用
外部人材の活用は大企業に限った動きではない。経済産業省近畿経済産業局の調査では、副業・兼業人材を「現在活用している」中小企業は全体で約1割にとどまる一方、宿泊業・飲食サービス業に限ると約3割まで高まっており、活用効果としては「人手不足・業務負担の軽減」が最多となっている(※4)。人手不足が特に深刻な飲食業界では、正社員採用を待たずに外部の専門人材で当面の商品開発体制を補う動きが、企業規模を問わず広がっていると言える。
意思決定の判断基準:期間・稼働量・機密性で選ぶ
顧問と採用のどちらを選ぶべきかは、以下の3つの軸で切り分けると判断しやすい。
- プロジェクトの期間:単発・短期のテーマ(新業態の立ち上げ企画、期間限定商品の開発など)は顧問契約向き。継続的に発生する業務(年間を通じた新商品パイプラインの管理など)は採用向き。
- 必要な稼働量:週1回程度の壁打ち・レビューで足りるなら顧問契約で十分。日々の試作管理や社内調整まで必要なら、フルタイムで動ける正社員が適している。
- 情報の機密性:レシピの核心やサプライヤー情報など社外に出したくない機密性の高い情報を多く扱う場合は、雇用契約による正社員のほうが情報管理の面で安心感がある。
顧問と採用を組み合わせるハイブリッド型という選択肢
実務では「どちらか一方」ではなく、顧問と採用を役割分担で併用する企業も増えている。方向性の壁打ちや専門的な監修・レビューは顧問に依頼し、日々の試作・社内調整・スケジュール管理は正社員が担う体制だ。この組み合わせであれば、外部の専門性を借りながら、実務の知見は着実に社内へ蓄積できる。まず顧問契約でスタートし、事業が軌道に乗った段階で採用に切り替える、あるいは顧問経由で出会った人材を将来的に正社員として招くといった段階的な進め方も現実的な選択肢になる。
顧問契約・採用、それぞれで起こりやすい失敗と回避策
顧問契約でよくある失敗は、稼働頻度や成果物の範囲があいまいなまま契約してしまい、「思ったより動いてもらえない」という期待値のギャップが生じるケースだ。契約時点で月あたりの稼働時間、レビューの頻度、成果物の形式を具体的に取り決めておく必要がある(詳しくは商品開発顧問とは?契約形態と月額費用相場、コンサルとの違いを解説を参照)。
正社員採用でよくある失敗は、採用活動に想定以上の時間とコストがかかった末に、実際に入社した人材とのミスマッチが発覚し早期退職につながることだ。紹介手数料は返金保証期間が過ぎると原則戻らないため、採用要件を固める段階で現場の商品開発責任者を交えて具体的なスキルセットを言語化しておくことが、ミスマッチを避ける近道になる。コンサルティング会社への外注という第三の選択肢を含めて比較検討したい場合は、新商品開発コンサルへの依頼ガイド|費用相場・依頼できること・選び方を解説も参考にしてほしい。
まとめ
商品開発の人材確保で顧問契約と正社員採用のどちらを選ぶべきかは、費用の多寡だけで決められるものではない。プロジェクトの期間、必要な稼働量、社内に知見を残す必要性の3点を軸に整理すると、自社に合った選択が見えやすくなる。まずは短期テーマを顧問で立ち上げつつ、中長期的に必要な機能は採用で内製化するというハイブリッドな進め方も、有効な選択肢の一つだ。
参考資料
- 人材紹介|手数料の相場は?仕組みや理論年収、削減方法を解説 マンパワーグループ株式会社
- 人材ビジネス市場に関する調査を実施(2024年度) 株式会社矢野経済研究所
- 大企業への「外部プロ人材(フリーランス・副業)」活用に関する実態調査2025 株式会社みらいワークス
- 副業・兼業人材の中小企業での活用促進に向けた調査事業 経済産業省
- 人手不足に対する企業の動向調査(2025年7月) 株式会社帝国データバンク
FAQ