居抜きでの業態転換の費用は、①前業態との設備適合度、②造作譲渡料、③退去時の原状回復条件の3つでほぼ決まります。造作譲渡料は業態別の平均で約136万〜325万円というデータがあり※4、スケルトン返しの工事費は坪3万〜10万円程度が目安とされます※3。
既存店舗の不振や退店をきっかけに、居抜き物件を活用した業態転換を検討する事業開発担当者向けに、進め方の手順、コスト削減効果、原状回復・契約上の注意点をまとめました。スケルトンからの新規出店と比較したときの判断軸も解説します。
居抜きでの業態転換の費用は、①前業態との設備適合度、②造作譲渡料、③退去時の原状回復条件の3つでほぼ決まります。造作譲渡料は業態別の平均で約136万〜325万円というデータがあり※4、スケルトン返しの工事費は坪3万〜10万円程度が目安とされます※3。
既存店舗の不振や退店をきっかけに、居抜き物件を活用した業態転換を検討する事業開発担当者向けに、進め方の手順、コスト削減効果、原状回復・契約上の注意点をまとめました。スケルトンからの新規出店と比較したときの判断軸も解説します。
居抜き物件での業態転換とは、既存店舗の厨房設備・内装・什器の一部またはすべてを活用しながら、異なるコンセプトの業態に切り替えることを指します。自社の既存店舗を撤退させて別業態に切り替える「自社内の業態転換」と、他社が撤退した居抜き物件を新規に借り受けて出店する「物件取得型の業態転換」の2つのパターンがあり、いずれも解体費用を抑えられる点が共通のメリットです。
スケルトン(内装・設備を撤去した躯体のみの状態)からの新規出店と比べると、厨房機器や空調・排気設備をゼロから導入する必要がないため、初期投資と工事期間の両方を圧縮できる可能性があります。一方で、前業態の設備仕様が新業態のオペレーションと合わない場合は、想定以上の改装費が発生することもあり、「居抜き=必ず安い」と単純化できない点には注意が必要です。
中小企業庁の調査によると、宿泊業・飲食サービス業の廃業率は5.6%と全業種の中で最も高い水準にあります。一方で開業率も17.0%と全業種中もっとも高く、飲食業は新規参入と退店が同時に活発に起きている業種であることが分かります※1。退店が多いことから、居抜き物件が市場に出やすい状況と考えられ、多店舗展開企業にとっては出店候補地の選択肢が広がっている状況といえます。
帝国データバンクの調査では、2025年の飲食店倒産件数は900件と過去最多を更新しました(前年894件、3年連続の増加)※2。原価高・人手不足による収益悪化が主因とされており、既存業態を維持できず撤退する店舗が増えるほど、居抜き物件の供給も増える構造になっています。多店舗展開を進める企業にとっては、こうした市場に出てくる居抜き物件を、自社の新業態の「型」に合わせて見極める目利き力が、出店スピードとコストの両面で競争優位につながります。
造作譲渡とは、前テナントが設置した内装・厨房設備などを、次の入居者が買い取る取引のことです。交渉の相手は退去予定のテナントで、貸主の承諾を得ることが前提になります※5。
飲食店ドットコムが公開している業態別の造作譲渡料の平均は次のとおりです※4。
| 業態 | 造作譲渡料の平均 |
|---|---|
| 中華 | 324.9万円 |
| 焼肉 | 324.2万円 |
| 洋食 | 294.4万円 |
| 鉄板焼き・お好み焼 | 271.3万円 |
| 専門料理 | 266.0万円 |
| テイクアウト | 182.0万円 |
| カラオケ・パブ・スナック | 168.6万円 |
| お弁当・惣菜・デリ | 136.2万円 |
(出典:※4。2024年5月9日更新。集計期間・件数は出典に記載がありません。)
次の項目は、造作譲渡料に含まれないことが多いとされています※5。
どこまでが譲渡の対象かは、付帯設備表で一つずつ確認する必要があります。
業態転換は、物件を借りてから改装を始めるのではなく、コンセプトと物件の適合性を事前に見極める段階から始まります。
まず、新業態がどのような厨房設備・客席数・動線を必要とするかを明文化します。既存業態からの転換であれば、現在の設備のうち何を継続活用し、何を入れ替えるかをリスト化しておくと、後続の物件調査や見積もり比較がスムーズになります。
候補物件の設備状況(厨房機器の年式・稼働状況、排気ダクトの太さ、給排水・電気容量)を確認するとともに、賃貸借契約の内容を精査します。あわせて付帯設備表(設備の有無・所有者・故障の有無)を受け取り、リース品か譲渡対象かを確認します。特に「退去時の原状回復範囲」「造作譲渡の有無」「賃料改定の条件」は、後々のコストに直結するため、契約前の段階で必ず確認すべき項目です。
新業態のコンセプトと物件の設備を照らし合わせ、活用できる設備・入れ替えが必要な設備を仕分けします。厨房機器の入れ替えが多いほど工事費・工期が伸びるため、この段階での見極めが投資回収期間に直結します。複数の施工会社から相見積もりを取り、改装範囲ごとの費用感を比較しておくことが望まれます。
業種によっては、飲食店営業許可の再取得や、消防法上の用途変更手続き、深夜酒類提供飲食店営業の届出などが必要になる場合があります。前業態と新業態で提供するメニューや営業形態(酒類提供の有無、深夜営業の有無など)が異なる場合は、保健所・消防署への事前相談を早い段階で行い、オープン日程に影響が出ないようスケジュールに織り込むことが重要です。必要になりうる許可の一覧は業態開発で必要になる許認可|飲食店営業許可以外に確認すべき許可一覧で整理しています。
改装完了後は、正式オープン前にオペレーションの動作確認を行います。居抜きで引き継いだ設備が新業態のオペレーションに実際にフィットするかは、机上の計画だけでは分からない部分もあるため、試運転の段階で厨房動線や提供スピードを検証しておくと、オープン後のトラブルを減らせます。
新業態そのものの企画プロセス(市場分析からコンセプト設計、多店舗化判断まで)については、業態開発とは?新業態立ち上げの流れと成功条件を解説で詳しく解説しています。
前業態の設備が新業態に合うかどうかで、改装費は大きく変わります。次の項目を、契約前に確認します。
| 確認項目 | 確認する内容 | 合わない場合に起きやすいこと |
|---|---|---|
| 排気・ダクト | 新業態の加熱方法に足りる排気能力か | ダクト工事の追加 |
| 給排水・グリストラップ | 油・洗い物の量に対応できる容量か | 配管・グリストラップの入れ替え |
| 電気・ガス容量 | 新しい厨房機器の合計容量に足りるか | 容量増設の工事・申請 |
| 客席数・動線 | 想定の回転・提供方法に合うか | 客席・カウンターの改装 |
| 看板・外装 | 前業態の印象が残らないか | 外装・サインの刷新 |
居抜き物件での業態転換において、実務上もっとも見落とされやすいのが「自社が退去する際の原状回復義務」です。居抜きで入居した場合でも、賃貸借契約上「退去時はスケルトン渡し」と定められているケースは少なくありません。この場合、自社が居抜きで引き継いだ設備であっても、退去時には解体・撤去して更地状態(スケルトン)に戻す義務を自社が負うことになります。
スケルトン返しの工事費用は、坪単価3万円〜10万円程度が目安とされ、内装・設備の量や造作物の撤去範囲、廃棄物処理費用によって変動します※3。飲食店は厨房設備や排気ダクトなど撤去対象が多いため、他業種のテナントと比べて費用が上振れしやすい傾向があります。入居時点でこの将来コストを見積もりに織り込んでおかないと、次の業態転換や撤退の判断を鈍らせる要因になりかねません。契約書を締結する前に、退去条件(原状回復の範囲、造作譲渡の可否)を必ず書面で確認することをお勧めします。
居抜き物件での業態転換にかかる費用は、「前業態と新業態の設備適合度」によって大きく変動します。厨房のレイアウトや排気設備がそのまま使える場合は、スケルトンからの新規出店と比べて内装・設備工事費を数割単位で圧縮できる可能性がある一方、動線や設備仕様の異なる業態への転換では、解体・入れ替え費用がかさみ、コスト削減効果が想定より小さくなることもあります。
| 比較項目 | 居抜きでの業態転換 | スケルトンからの新規出店 |
|---|---|---|
| 初期改装費 | 前業態との適合度次第で圧縮できる可能性あり | 内装・設備をすべて新設するため高くなりやすい |
| 工事期間 | 適合度が高いほど短縮しやすい | 設計から着工まで含めて長くなりやすい |
| 設備の自由度 | 既存設備の制約を受けやすい | コンセプトに合わせて自由に設計可能 |
| 退去時のリスク | 契約条件次第でスケルトン返し費用が発生 | 契約条件次第で同様のリスクあり |
費用の妥当性を判断するには、候補物件ごとに「活用できる設備」と「入れ替えが必要な設備」を仕分けたうえで、複数の施工会社から見積もりを取り比較することが不可欠です。数字だけを見て「居抜きだから安い」と即断せず、退去時のコストまで含めたトータルの投資回収シミュレーションを行うことが望まれます。
既存の厨房を使った別の形態としては、ゴーストキッチン業態の始め方|既存厨房を活かした新業態開発の進め方とコストもあります。
自社店舗が不振の場合は、要因が業態にあるのか、立地にあるのかで判断が分かれます。業態に要因がある場合は業態転換が選択肢になりますが、立地に要因がある場合は転換しても改善しにくいことがあります。撤退の判断基準は新業態の撤退基準|損切りの判断指標とタイミングの決め方を解説、収支の見立ては新業態の損益分岐点シミュレーション|プロトタイプ店舗で試算すべき数値と手順、資金面は新業態の資金調達方法|自己資金・融資・補助金の使い分けと審査のポイントをご覧ください。
居抜き物件での業態転換は、既存設備を活用できる分、スケルトンからの新規出店よりも初期投資と工事期間を圧縮できる可能性がある一方、前業態との設備適合度や契約上の原状回復義務によってコスト構造が大きく変わります。新業態に必要な設備の整理から始め、物件・契約条件の調査、改装計画、許認可確認、テスト運営という手順を踏むことで、想定外のコスト増や開業遅延を防ぎやすくなります。特にスケルトン返しの義務がある物件では、退去時のコストまで含めた投資回収シミュレーションを事前に行っておくことをお勧めします。
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