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02Product Development商品開発

介護食(介護食品)の商品開発委託|規格・許可・費用の実務

執筆: 旨味転生編集部読了目安 約12分

高齢者向けカテゴリーへの参入を検討している食品メーカー・外食チェーン・給食事業者の商品開発担当者に向けて、介護食の新商品を外部委託で開発する際に押さえておきたい要点を解説します。最初に決めるべきなのは、UDF・スマイルケア食・特別用途食品のうちどの表示を狙うかです。本記事ではその整理を軸に、委託の流れ、費用の見方、委託先選定の確認項目までを解説します。なお本記事が扱うのは、施設の給食業務委託ではなく、自社ブランド商品の開発委託です。

介護食の商品開発委託は「どの表示を狙うか」で難易度が変わる

介護食の商品開発委託が、一般的な食品OEMと大きく異なる点は、やわらかさやとろみの度合いが感覚的な表現ではなく、かたさや粘度といった物性値で規定されていることです。狙う表示によって必要な手続きの重さが変わるため、委託先となる工場を探す前に、どの表示を狙うのかを決めておくことが実務的な進め方になります。

「介護食」「やわらか食」といった一般的な名称そのものを使うことに、許可や届出は必要ありません。一方で、消費者や介護施設の担当者が商品を選ぶ際の目印として使っているのは、業界団体や国の規格に基づくマークや表示です。委託先を探し始める前に、まず対象者(噛むことが難しい方向けか、飲み込むことが難しい方向けか、栄養補給を必要とする方向けか)と、販路(市販用か業務用か)を整理しておくと、後工程での手続き選びがスムーズになります。

介護食に関わる3つの規格・制度を整理する

介護食に関わる規格・制度は、大きく3つの層に分かれます。ユニバーサルデザインフード(UDF)は業界の自主規格、そしゃく配慮食品のJASは国の規格に基づく格付、特別用途食品のえん下困難者用食品は消費者庁長官の許可制です。求められる手続きは、おおむねこの順に重くなります。

制度 主体 位置づけ 対象 必要な手続き 表示できること
ユニバーサルデザインフード(UDF) 日本介護食品協議会 業界の自主規格(協議会は2002年4月設立、自主規格第1版は2003年6月制定) かたさ・粘度で4区分 協議会会員が規格に適合した商品に区分表示 「容易にかめる」「歯ぐきでつぶせる」「舌でつぶせる」「かまなくてよい」の区分表示とUDFマーク※1※2※3
そしゃく配慮食品のJAS 農林水産省(登録認証機関が認証) 日本農林規格(平成28年8月17日農林水産省告示第1586号) 噛むことに問題がある方向け 規格適合とJAS格付表示 スマイルケア食「黄」マークの前提※4
特別用途食品(えん下困難者用食品・とろみ調整用食品を含む) 消費者庁 健康増進法に基づく許可制 飲み込むことに問題がある方向け 許可試験と消費者庁の審査を経た消費者庁長官の許可 「えん下困難者用食品」の表示、スマイルケア食「赤」マークの前提※4※5

スマイルケア食の青・黄・赤は、それぞれ求められる手続きが違う

スマイルケア食は、対象者に応じて青・黄・赤の3色で区分される識別マークです。同じ「識別マーク」という括りでも、色によって前提となる手続きの難易度は大きく異なります。いずれのマークも、利用にあたっては農林水産省への申請が必要です。

  • 青は、健康維持のために栄養補給を必要とする方向けの区分です。エネルギーとたんぱく質が基準を満たすことを企業が自ら宣言し公表する、自己適合宣言の様式を提出する形で利用できます※4。
  • 黄は、噛むことに問題がある方向けの区分です。そしゃく配慮食品のJAS(平成28年8月17日農林水産省告示第1586号)の基準に適合し、JAS格付表示を取得した商品に限られます。あわせて、専門職への相談を促す注意喚起文言の表示も求められます※4。
  • 赤は、飲み込むことに問題がある方向けの区分です。えん下困難者用食品として、特別用途食品の表示許可を取得した商品のみが対象になります※4。

マークの利用は、「スマイルケア食識別マーク利用許諾要領」(平成28年11月制定・令和5年3月改正)に基づいて申請する仕組みです※6。

UDFは物性値で区分が決まる

UDFの区分は、主観的な「やわらかさ」の印象ではなく、かたさの上限値と粘度の下限値という数値で決まります。そのため、試作段階から物性を測定する工程を組み込んでおく必要があります。

  • 区分1「容易にかめる」:かたさの上限は5×10⁵N/m²
  • 区分2「歯ぐきでつぶせる」:かたさの上限は5×10⁴N/m²
  • 区分3「舌でつぶせる」:かたさの上限はゾル状で1×10⁴N/m²、ゲル状で2×10⁴N/m²。ゾル状は粘度の下限が1500mPa・s
  • 区分4「かまなくてよい」:かたさの上限はゾル状で3×10³N/m²、ゲル状で5×10³N/m²。ゾル状は粘度の下限が1500mPa・s※1

とろみ調整食品は、これらの区分1〜4の物性値に調整するための用途として位置づけられています※1。

UDFマークは、日本介護食品協議会の規格に適合した商品に付けられるもので、協議会の会員である食品メーカーが、この規格に基づいて製造・販売しています※2。マークを自社商品に表示できるかどうかは協議会の規定によるため、自社が会員でない場合は、委託先が会員かどうかも含め、企画の早い段階で協議会に確認しておくと計画が立てやすくなります。

えん下困難者用食品は許可基準の数値が定められている

特別用途食品の中でも、えん下困難者用食品は、かたさ・付着性・凝集性という3つの物性値によって、許可基準I〜IIIが定められています。そのため、レシピ設計の自由度は、これらの数値によって具体的に縛られる形になります。

例えば許可基準I(均質なもの、例えばゼリー状の食品が該当します)は、かたさが2.5×10³〜1×10⁴N/m²、付着性が4×10²J/m³以下、凝集性が0.2〜0.6と定められています※7。

特別用途食品として販売するには、消費者庁長官の許可が必要です※5。許可にあたっては、規格や要件への適合性について国の審査を受ける必要があり、事前相談が推奨されています。許可試験は、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所や、登録試験機関が実施します※8※9。許可を取得した後も、品質管理等報告書の提出が求められるため、取得して終わりではなく、その後の運用まで含めて考えておく必要があります※8。

市販用と業務用で、設計も委託先も変わる

同じ介護食でも、市販用と業務用では、包装形態・単価・求められる調理オペレーションが異なります。近年のデータでは、業務用と冷凍タイプの伸びが目立っています。

日本介護食品協議会がまとめた2025年のUDF統計によると、生産額は583億円で前年比3.5%増となった一方、生産量は7万1381tで前年比0.9%減でした。内訳をみると、市販用は4万31t(前年比7.0%減)と減少したのに対し、業務用は3万1350t(前年比8.1%増)と伸びています。形態別では、冷凍タイプが生産量2万1075t(前年比9.1%増)、生産額230億円(前年比11.5%増)と拡大しており、製品登録数は5月末時点で2,287品目となっています※10※11。

業務用が伸びている背景としては、介護・福祉施設における人手不足と、それに伴う調理の簡略化ニーズが指摘されています※12。解凍と盛り付けだけで提供できる商品は、施設の調理オペレーションを省力化できる点が評価されやすいと考えられます。一方、在宅向けでは、宅配サービスの活性化や電子レンジ対応へのニーズも挙げられています※12。

ここから見えてくるのは、「量を取るか単価を取るか」ではなく、「誰の調理オペレーションに載せる商品にするか」で設計が決まるという点です。

企画から発売までの流れ

介護食のOEM委託は、一般的な食品OEMの工程に加えて、狙う表示を決める工程と、物性測定を繰り返す工程が前半に入るのが特徴です。

  1. 対象者・販路・狙う表示(UDFの区分、スマイルケア食の色、特別用途食品の許可)を決める
  2. 委託先候補に相談する。物性測定設備の有無、狙う表示への対応可否、概算費用を確認する
  3. 試作と物性測定を繰り返し、目標とする区分や許可基準の数値に近づけていく
  4. 官能評価(食べやすさ・見た目・味)と物性値の両立を詰める。介護食では「食べる楽しみ」への配慮が課題として挙げられています※12
  5. 規格・許可の手続きを進める。JAS格付の認証、特別用途食品の許可申請と許可試験、スマイルケア食マークの利用申請などが該当します
  6. 食品表示を確定する。栄養成分表示・アレルゲン表示に加え、制度ごとに求められる注意喚起文言を反映します
  7. 量産・出荷体制を構築する

物性を目標の数値に収める工程は、試作の往復が発生しやすい部分です。試作回数の上限と、それを超えた場合の追加試作費用の条件を、早い段階で委託先と決めておくと、スケジュールとコストの両方で見通しが立てやすくなります。委託先の選び方全般については、食品OEM委託先の選び方|8つの選定基準と見積比較のポイントもあわせてご確認ください。

費用をどう見積もるか

介護食の場合、通常の食品OEMにかかる費目に加えて、「規格・許可対応費」という第2の費目のまとまりが乗ってきます。この2つを分けて見積もりを取ると、委託先同士の比較がしやすくなります。

費目 内容 費用に影響しやすい要因
企画・レシピ設計費 コンセプト設計、配合設計 狙う区分の厳しさ
試作費 試作品の製造 試作回数、原料の種類
物性測定・分析費 かたさ・付着性・凝集性・粘度の測定 測定項目数、測定の回数
規格・許可手続き費 JAS格付の認証、特別用途食品の許可試験、マーク利用申請 狙う制度(自主規格か許可制か)
原材料費・加工費・包装費 量産時の製造原価 ロット、包装形態(個食トレーか業務用大袋か)
維持費 許可後の報告、表示変更時の対応 取得した制度の維持要件

試作費については、食品OEM全体でみても商品ジャンルによって幅があり、粉末・パウダー系で1〜5万円、飲料・調味料で2〜10万円、スナック・焼き菓子で5〜20万円といった目安が示されています※13。介護食の場合は、これに物性測定や規格対応の費用が加わるため、通常の食品OEMよりも見積もりの項目が増える点を想定しておく必要があります。

規格・許可対応費は、生産量に比例しない固定費的な性格を持つため、小ロットで進める場合は、1食あたりの単価への影響が大きくなりやすい点にも注意が必要です。見積書に「介護食対応一式」とまとめて記載されている場合は、内訳を分けて提示してもらうと、他社の見積もりと比較しやすくなります。

委託先を選ぶときの確認項目

  • 物性測定の設備と運用 自社で測定できるのか、外部に委託しているのかを確認します。試作の回転速度に直結する部分です。
  • 狙う制度への対応実績 日本介護食品協議会の会員か、そしゃく配慮食品のJAS格付の経験があるか、特別用途食品の許可を実際に通した経験があるかを確認します。
  • 包装形態と販路の適合 市販用の個食パッケージに強いのか、業務用の大容量に強いのか、冷凍か常温レトルトかも、自社の販路と合わせて確認します。
  • 食品表示・法令対応の分担 制度ごとに求められる注意喚起文言まで含めて、表示原稿を誰が作成するのかを確認します。食品表示の作成代行については、食品表示(一括表示)の作成代行|依頼先と費用、法令チェックの要点も参考にしてください。
  • 小ロット・試作への対応 テスト販売段階の量に応えられるかを確認します。
  • 秘密保持と配合の権利帰属 配合や物性設計のノウハウをどう扱うかは、契約時に明確にしておく必要があります。詳しくは商品開発の秘密保持契約(NDA)の注意点|レシピ・ノウハウの権利帰属を守るで解説しています。

つまずきやすいポイント

介護食の商品開発では、数値の基準を満たす設計と、おいしく食べられる設計が、別の作業になりやすい点に注意が必要です。

物性値を優先しすぎると、テクスチャーが単調になりやすく、「食べる楽しみ」への配慮が課題として挙げられています※12。官能評価と物性測定を、同じ試作ロットで並行して進めると、判断がぶれにくくなります。

「介護食対応可」という表現の幅は広く、UDFの区分表示まで対応できる工場なのか、レシピをやわらかくすることだけに対応できる工場なのかは、委託先ごとに異なります。事前に対応範囲を確認しておく必要があります。

表示の最終的な責任についても注意が必要です。委託先が表示原稿の作成を支援する場合でも、表示内容の適正性についての責任は、多くの場合、商品を販売する自社側にあります。契約時に、作成範囲と責任分担を明確にしておくことをおすすめします。

また、許可制度は取得後も維持のための対応が必要です。特別用途食品の許可を取得した場合、品質管理等報告書の提出が求められるため※8、社内の担当者と更新のスケジュールを、取得前の段階で決めておくと、運用がスムーズになります。

規格や届出を伴う開発委託という点では、機能性表示食品の開発委託|届出支援込みの費用相場と流れも共通する論点が多く、あわせて参考になります。

まとめ

介護食の商品開発委託では、最初に狙う表示(UDFの区分、スマイルケア食の色、特別用途食品の許可)を決めることが、その後の工程全体を左右します。次に、物性測定を回せる委託先を選ぶことで、試作の往復にかかる時間とコストを抑えられます。費用面では、通常のOEM費目とは別枠で規格・許可対応費を見積もり、内訳を分けて比較することが重要です。そして、許可制度は取得した後も維持のための対応が発生するため、その運用まで含めて計画に組み込んでおくことをおすすめします。

商品化の前段で社内の検討項目を洗い出す際は、業態開発 着手前チェックリスト(無料ダウンロード)もあわせてご活用ください。

参考資料

  1. 日本介護食品協議会「UDF区分策定の経緯」
  2. 日本介護食品協議会「ユニバーサルデザインフードとは」
  3. 日本介護食品協議会「発足経緯」
  4. 農林水産省「スマイルケア食(新しい介護食品)」
  5. 消費者庁「特別用途食品について」
  6. 農林水産省「スマイルケア食識別マーク 利用許諾要領」(平成28年11月制定・令和5年3月改正)
  7. ニュートリー株式会社「特別用途食品『えん下困難者用食品』とは」
  8. 消費者庁「特別用途食品の表示許可等の申請を検討している事業者の方へ」
  9. 消費者庁「登録試験機関制度について」
  10. 食品新聞「介護食市場が拡大 25年生産額は3.5%増」
  11. 日本食糧新聞「25年UDF統計 数量微減も金額増加 業務用の冷凍タイプ伸びる 日本介護食品協議会」
  12. 食品開発OEM.jp「介護食のOEM開発を成功させるには?トレンドや注意点もご紹介!」
  13. Agriture「食品OEM試作費用の相場とコスト削減10のポイント」

FAQ

よくある質問

「介護食」と名乗って販売するのに、許可や認証は必要ですか?
「介護食」「やわらか食」といった一般的な表現自体に許可は不要ですが、ユニバーサルデザインフード(UDF)のマークは日本介護食品協議会の自主規格に基づくもので、協議会会員が規格に適合した商品に表示します。スマイルケア食の識別マークは農林水産省への利用申請が必要です。また「えん下困難者用」のように医学的・栄養学的な用途を表示する場合は、特別用途食品として消費者庁長官の許可を受ける必要があります。狙う表示によって必要な手続きが変わります。
UDFマークとスマイルケア食マークは、どちらを取るべきですか?
併用もできるため二者択一とは限りませんが、販路で考えると整理しやすくなります。UDFは市販の介護食品で広く使われ、消費者や介護施設の認知がある区分表示です。スマイルケア食は青・黄・赤の3分類で、黄はそしゃく配慮食品のJAS格付、赤は特別用途食品の許可が前提になるため、取得の難易度が異なります。
開発期間はどのくらい見ておけばよいですか?
商品と狙う表示によって大きく変わります。自主規格の範囲で進める場合は一般的な食品OEMと大きく変わりませんが、特別用途食品の許可を目指す場合は、登録試験機関などでの許可試験と消費者庁の審査が加わるため、その分の期間を別枠で見込んでおく必要があります。具体的な期間は事前相談の段階で確認することをおすすめします。
委託先が「介護食の実績あり」と言う場合、何を確認すべきですか?
実績の中身を分解して確認すると差が見えます。物性(かたさ・付着性・凝集性・粘度)の測定設備を自社で持っているか、日本介護食品協議会の会員か、そしゃく配慮食品のJAS格付や特別用途食品の許可を実際に通した経験があるか、市販用と業務用のどちらの包装形態に強いか、の4点が実務的な確認項目になります。
少量のテスト販売から始めることはできますか?
小ロット対応をうたう工場もあるため可能な場合がありますが、ロットが小さいほど1食あたりの単価は上がりやすい傾向があります。加えて、規格対応のための物性試験費は生産量に関係なく発生するため、小ロットでは単価に占める比率が大きくなります。テスト販売時と量産時の両方のロットで見積もりを取ると、単価の変化を早い段階で把握できます。

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