新商品に使いたい添加物が規制に触れないか、表示はどう書けばよいかを確認したい、というのが本記事の想定読者の悩みです。結論から言うと、確認すべきことは「使ってよいか」だけでなく「その添加物をその食品にどれだけ使えるか(使用基準)」と「どう表示するか(表示義務)」の3点で、これらは商品企画の初期段階で確認しておくほど手戻りが少なくなります。本記事では、厚生労働省・消費者庁の公開情報をもとに、商品開発の工程に沿って整理します。
商品開発で押さえる食品添加物の規制|表示義務と使用基準
食品添加物の4分類|まず「どれに該当するか」を確認する
食品添加物は食品衛生法上、指定添加物・既存添加物・天然香料・一般飲食物添加物の4つに分類されます(※1・※3)。
- 指定添加物:食品衛生法第12条に基づき、内閣総理大臣(厚生労働大臣)が安全性と有効性を確認して指定した添加物です(※1・※3)。化学的合成品だけでなく天然由来のものも含まれ、2025年8月25日時点で476品目が指定されています(※4)。
- 既存添加物:国内で既に使用され長い食経験があるものとして、例外的に使用が認められている添加物です(※3)。同時点で327品目がリスト化されています(※4)。
- 天然香料:りんごや緑茶など動植物から得られる、着香を目的とした添加物です。使用量が微量で、長年の食経験から健康被害がないとされているものが対象です(※3)。
- 一般飲食物添加物:通常は食品として飲食に供されているものを、添加物としての効果を目的に使用する場合を指します(※3)。
新規の原料を商品に採用する際は、まずこの4分類のどれに該当するかを確認します。指定添加物・既存添加物であれば、厚生労働省・消費者庁が公表しているリストに名称が載っているかどうかで確認できます(※1・※2)。リストに載っていない新規の添加物を使いたい場合は、指定を受けるための手続きが別途必要になり、商品発売のスケジュールに大きく影響するため、企画の初期段階で必ず確認しておく事項です。
使用基準|「使えるか」ではなく「どの食品に・どれだけ使えるか」
添加物は、指定・既存のリストに載っていれば無条件に使えるわけではありません。添加物ごとに、使用できる対象食品の種類と、使用量の上限(使用基準)が個別に定められています(※2)。
原材料メーカーから受け取る成分規格書には、その添加物自体の規格(純度や成分など)は記載されていますが、貴社が作ろうとしている商品に対する使用基準の適合状況までは、規格書だけでは分かりません。同じ添加物でも、対象食品の種類によって使用が認められる量が異なるため、使用基準は「添加物単位」ではなく「添加物×対象食品」の組み合わせで確認する必要があります。保存基準(保存条件に注意が必要な添加物に設定される基準)が別途定められている添加物もあり、この点も見落としやすい部分です(※2)。
処方設計の段階で使用基準への適合を確認せず、試作・パッケージデザインまで進めてしまうと、基準超過が発覚した時点で配合の見直しが必要になり、後工程の手戻りが発生します。処方が固まる前に、使用を予定している添加物について使用基準の対象食品に該当するかを確認しておくことが望まれます。
表示義務|物質名・用途名・一括名の使い分け
使用した添加物は、原則としてすべて物質名で表示する必要があります(※5)。表示は、添加物に占める重量の割合の高いものから順に記載します(※5)。
用途名を併記しなければならない8種類
次の8種類の用途に該当する添加物は、物質名に用途名を併記して表示する必要があります(※4):甘味料、着色料、保存料、増粘剤・安定剤・ゲル化剤又は糊料、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤(防ばい剤)。
一括名表示ができる14種類
次の14種類に該当する添加物は、物質名の代わりに一括名で表示することが認められています(※4):イーストフード、ガムベース、かんすい、苦味料、酵素、光沢剤、香料、酸味料、チューインガム軟化剤、調味料、豆腐用凝固剤、乳化剤、水素イオン濃度調整剤、膨張剤。
用途名表示は「物質名+用途名」、一括名表示は複数の添加物をまとめて機能名だけで表示できる点が異なります。どちらの方式で表示するかは添加物の種類によって決まっており、貴社が任意に選べるものではありません。処方設計時に使用する添加物を一覧化し、それぞれがどの表示方式に該当するかを整理しておくと、パッケージデザインの表示欄設計がスムーズになります。
キャリーオーバー・加工助剤の表示免除と、その落とし穴
一部の添加物は表示が免除されます。免除の対象となるのは、次の2つです(※4)。
- 加工助剤:食品の加工の際に添加されるもので、①加工完了前に除去される、②原材料由来の成分に変化しその量を明らかに増加させない、③含有量が少なく食品への影響がない、のいずれかに該当するもの。
- キャリーオーバー:原材料の製造・加工の過程で使用されるが、当該食品の製造・加工の過程では使用されず、食品中には効果を発揮できる量より少ない量しか含まれていないもの。
この2つに該当すれば、原材料由来の添加物であっても最終製品のパッケージに表示する必要はありません。ただし、アレルゲン表示はこの免除の対象外です(※5)。加工助剤・キャリーオーバーに該当する添加物であっても、それがアレルゲンを含む場合はアレルゲン表示が必要になるため、免除の判断とアレルゲン表示の判断は別々に行う必要があります。
この判断は、使用する原材料の製造・加工工程まで遡って確認しないと正確に行えません。OEM委託先や原料サプライヤーから、原材料に使われている添加物の情報だけでなく、その添加物が最終製品にどの程度残存するかという情報も入手しておく必要があります。
「無添加」「不使用」表示は2022年ガイドラインの10類型に注意
添加物を使わないこと自体は商品の訴求点になりますが、その表示方法には注意が必要です。消費者庁は2022年3月30日に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を公表し、消費者に誤解を与えやすい表示を10類型に整理しました(※6)。このガイドラインは不使用表示を一律に禁止するものではなく、事業者が自社の表示案を自己点検するための基準として位置づけられています(※6)。ガイドライン公表後の猶予期間は2024年3月31日で終了しているため、現在新たに商品化する場合は、この10類型に該当する表示を避ける前提で企画する必要があります。
代表的な類型には、無添加の対象が不明確な単なる「無添加」表記、同一機能の他の添加物や原材料に代替しただけであるにもかかわらず不使用を強調する表示、健康・安全性と関連付けて優良性を訴える表示などが含まれます(※6)。パッケージのキャッチコピーを検討する段階で、法務・品質保証の担当者と一緒にこの10類型との照合を行っておくことが、発売直前の表示修正を避ける実務的な対策になります。
商品開発の工程でいつ確認するか
添加物規制の確認は、工程ごとに確認すべき内容が変わります。
| 工程 | 確認すべきこと | 確認が遅れた場合の影響 |
|---|---|---|
| 企画・処方設計 | 使用したい原料が4分類のどれに該当するか、指定・既存のリストに載っているか | 未指定の添加物であれば指定手続きが必要になり、発売スケジュールが大きく後ろ倒しになる |
| 処方確定 | 使用基準(対象食品・使用量の上限)への適合、保存基準の有無 | 基準超過が発覚すると配合の見直しが必要になり試作からやり直しになる |
| 表示原案作成 | 物質名・用途名・一括名の表示方式、キャリーオーバー・加工助剤の該当性、アレルゲン表示 | パッケージデザイン確定後の表示修正は版下差し替えのコストを生む |
| コピー・訴求検討 | 「無添加」「不使用」表示がガイドラインの10類型に該当しないか | 発売後に表示の是正・回収対応が必要になる可能性がある |
表示原案の作成そのものについては食品表示(一括表示)の作成代行|依頼先と費用、法令チェックの要点で、依頼先の類型や着手のタイミングを整理していますので、あわせてご参照ください。
OEM委託・原料調達で確認しておきたいこと
自社で処方設計を行わず、OEMメーカーに開発を委託する場合でも、添加物規制への対応が丸ごと委託先に移るわけではありません。表示内容に責任を有する者(表示責任者)としての責任は、契約上どちらが担うかにかかわらず、実務上は発注側の確認が求められる場面が残ります。委託先の選定時には、成分規格書の提供体制や、使用基準・キャリーオーバーの判断根拠を説明できるかどうかを確認しておくと、後工程での手戻りを減らせます。委託先の選び方は食品OEM委託先の選び方|8つの選定基準と見積比較のポイントで整理しています。
海外展開を予定している商品の場合は、日本国内の基準を満たしているだけでは不十分です。使用できる添加物の種類や使用量の上限は国・地域ごとに異なり、日本で使用が認められている添加物が輸出予定先では使用不可、または使用量の上限が異なる場合があります(※7)。輸出を計画する時点で、対象国・地域を特定した個別の確認が必要です。
まとめ
食品添加物の規制対応は、①どの分類に該当するか、②使用基準(対象食品・使用量)に適合するか、③どの方式で表示するか、④キャリーオーバー・加工助剤の免除対象かどうか、⑤「無添加」「不使用」表示がガイドラインの10類型に該当しないか、という5つの確認事項に整理できます。これらは商品開発の企画・処方設計・表示原案作成・コピー検討という各工程のどこかで必ず確認が必要になる項目であり、後工程で発覚するほど手戻りのコストが大きくなります。OEM委託先や原料サプライヤーとは、成分規格書だけでなく使用基準・キャリーオーバーの判断根拠についても確認できる関係を作っておくことが、発売直前の手戻りを避ける実務的な備えになります。
参考資料
- 厚生労働省「食品添加物」(参照日: 2026-09-21)
- 消費者庁「食品添加物」(参照日: 2026-09-21)
- 東京都保健医療局「食品衛生の窓|食品添加物の分類」(参照日: 2026-09-21)
- 大阪府「加工食品の表示:添加物」(参照日: 2026-09-21)
- 東京都保健医療局「食品衛生の窓|加工食品(添加物)」(参照日: 2026-09-21)
- 消費者庁「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」(令和4年3月30日)(参照日: 2026-09-21)
- 農畜産業振興機構「加工食品の輸出拡大!海外食品添加物規制早見表」(参照日: 2026-09-21)
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