韓国への出店を検討しているものの、法人設立の形態や、日本にはない「権利金」という商慣行にどう資金計画を組めばよいか分からず検討が止まってしまう海外展開担当者は少なくありません。韓国は日本食レストランの店舗数で世界3位につける主要市場であり、制度の違いを理解した上で計画を立てることが出店成功の前提になります。
韓国出店にかかる費用ガイド|法人設立・権利金・許認可の実務を解説
韓国市場の位置づけ
農林水産省が2025年に公表した調査によると、海外の日本食レストラン数は世界全体で18万1,000店となり、韓国には約1万9,800店が存在します。韓国は中国、米国に次いで日本食レストランが3番目に多い国であり、2023年からの2年間で約1,590店増加しています※1。市場としての規模と成長性がある一方、既に競合が集積している地域も多く、立地選定とコンセプト設計の精度が求められます。
進出形態と法人設立の費用
外国人が韓国で事業を行う際に選べる進出形態は、主に株式会社、有限会社、支店、駐在員事務所の4つに整理されます。市場調査や情報収集が目的であれば駐在員事務所、実際に店舗を運営し収益を上げる場合は法人または支店を選ぶのが基本的な考え方です※2。
外国人投資として法的に認められるには、原則として1億ウォン以上の投資が一つの目安とされています※2。法人設立の手続きは、外国人投資申告、投資資金の送金、法人設立登記、許認可の取得、事業者登録、外国人投資企業登録という流れで進み、法人設立登記自体はおおむね2週間程度が目安とされています※2。ただし、これは法人設立そのものの期間であり、飲食業を営むために必要な許認可は別途取得する必要がある点に注意が必要です※3。
飲食業の許認可
韓国で飲食業を営むには、通常の法人設立手続きに加えて、管轄官庁が定める規定に沿った許認可の取得が求められます※3。具体的な要件は物件の用途地域や建物の状態によって異なるため、出店予定エリアが決まった段階で、現地の行政書士や不動産の専門家を通じて必要書類と審査基準を早期に確認しておくことが望まれます。許認可の手続きと店舗の内装工事を並行して進めると、開業までのリードタイムを短縮しやすくなります。
韓国特有の「権利金」制度
韓国で店舗物件を借りる際は、日本の敷金・保証金に加えて「権利金」という制度への理解が欠かせません。権利金は退去時に返還されない性質の金銭で、大きく3種類に整理されます※4。
| 権利金の種類 | 内容 |
|---|---|
| 営業権利金 | 既存テナントの営業権・顧客基盤に対する対価。月間純利益の12か月分程度を目安に算定されることがある |
| 施設権利金 | 内装・看板・厨房機器など、既存の設備投資に対する対価 |
| 商圏権利金 | 立地の集客力・人口流動など、エリアそのものの価値に対する対価 |
権利金は保証金とは別枠の支出であり、退去時に新しいテナントから回収できる可能性がある一方、当初の資金計画に織り込んでおかないと出店予算を大きく圧迫する要因になります。物件によって権利金の有無や算定根拠が異なるため、契約前に内訳の説明を求め、相場観のある現地パートナーと共に妥当性を確認することが実務上重要です。
出店準備で押さえておきたい実務ポイント
法人設立と物件契約が完了した後も、メニューの現地化や将来的なフランチャイズ展開の可能性を見据えた準備が必要です。日本の味をそのまま持ち込むと現地の嗜好と合わないケースがあり、海外メニューのローカライズで陥りがちな失敗については海外メニューのローカライズ失敗例|よくある原因と防ぐための実務手順で解説しています。また、直営ではなくフランチャイズ形態での展開を視野に入れる場合は、契約形態の設計が重要になるため、日本食の海外FC展開|契約形態(マスターFC・エリアFC)の違いと選び方もあわせて確認しておくと、出店形態の選択肢を広げられます。
まとめ
韓国出店では、法人設立の形態選択と外国人投資の最低投資額、飲食業に固有の許認可手続き、そして日本にはない権利金制度という3つの実務ポイントを押さえることが資金計画の精度を左右します。特に権利金は当初の出店予算に大きな影響を与える支出であり、契約前に内訳を確認し、現地の商慣行に通じたパートナーと連携して妥当性を見極めることが、想定外のコスト超過を防ぐ鍵になります。
参考資料
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