自社ブランドの商品を持ちたいが、製造ノウハウや工場を持たない——そうした小売・EC事業者や飲食チェーンの担当者に向けて、PB(プライベートブランド)商品開発を依頼する前に整理すべきこと、委託先の種類、企画から発売までの流れ、契約時に見落としやすい注意点を中立的な立場で解説する。
PB商品開発の依頼方法|企画から発売までの流れと委託先の選び方
なぜ今、PB商品開発を検討する企業が増えているのか
国内のPB市場は拡大が続いている。2024年度の実績では、セブン&アイ・ホールディングスのPB売上高が1兆5,000億円を突破し、イオングループの「トップバリュ」も1兆983億円に達したと報じられている。イオンは前年度比8.3%増、シジシージャパンは7%増、トライアルホールディングスは58.8%増と、大手小売各社のPB売上が軒並み伸びている状況にある(※1)。
物価高騰による生活防衛意識の高まりを背景に、ナショナルブランド(NB)商品の販売が伸び悩む一方でPB商品の需要が伸びる傾向は海外でも共通しており、米国のPB製造者協会(PLMA)の統計によれば、米国のPB売上高は2021年の2,180億ドルから2024年には2,706億ドルまで拡大し、市場シェアは19.1%から20.7%に上昇した。同期間のPB成長率は23.6%で、NBの成長率11.5%を大きく上回っている(※2)。こうした市場環境の変化が、PB商品の開発を自社の成長戦略に組み込みたい事業者の増加を後押ししている。
PBとOEM・NBの違いを整理する
依頼を検討する前に、混同されやすい3つの用語を整理しておきたい。
- PB(プライベートブランド):小売業者や事業会社が、商品の企画・開発から販売までを自社ブランドとして一貫して担う商品。
- OEM(相手先ブランドによる製造):発注企業が企画した仕様に沿って、メーカーが製造のみを請け負う契約形態。
- NB(ナショナルブランド):食品メーカーなどが自社で企画・製造・販売するブランド商品。
PBとOEMは対立する概念ではない。PB商品を実際に形にする際、多くの場合は製造工程をOEMメーカーに委託することになるため、「PB商品開発を依頼する」ことの実務上の中身は、「企画を固めたうえでOEM先に製造を依頼する」プロセスとほぼ重なる(※3)。この整理を押さえておくと、以降の依頼先選びや流れの理解がスムーズになる。
PB商品開発を依頼する前に整理しておくべきこと
委託先候補への相談をスムーズに進めるためには、依頼前に以下の情報を社内で整理しておくことが望ましい。
- ターゲットと価格帯:想定する購買層、店頭またはECでの想定価格帯
- 想定販路とロット:自社店舗のみか、卸売も含めるか。初回発注として現実的な数量
- ブランドの世界観・差別化ポイント:既存のNB商品と何が違うのか、価格訴求なのか品質訴求なのか
- 発売時期の希望:季節商材であれば逆算したスケジュール
これらが曖昧なまま相談を始めると、委託先からの提案の精度が下がり、見積もり比較もしづらくなる。特にロットと価格帯は、対応できる委託先の絞り込みに直結する情報のため、優先的に固めておきたい。
PB商品開発の依頼先の種類
PB商品開発を依頼できる先は、大きく3つのタイプに分かれる。
| 依頼先のタイプ | 特徴 | 向いている企業 |
|---|---|---|
| OEM/ODMメーカーへの直接依頼 | 企画から製造まで一括対応できる会社も多い。カテゴリーによって得意分野が異なる | 製造工程を任せられる相手を自社で見極めたい企業 |
| 卸売業者・商社経由 | 複数の製造委託先とのネットワークを持ち、条件に合う工場を仲介してもらえる | 自社に製造委託先の当てがない企業 |
| 商品開発コンサルティング会社 | 企画立案から委託先マッチング、プロジェクト管理まで支援 | 企画力を強化したい、複数案件を並行して進めたい企業 |
委託先ごとの詳しい選定基準や見積もり比較のチェックポイントは、食品OEM委託先の選び方|8つの選定基準と見積比較のポイントで解説しているので、実際に候補を絞り込む段階であわせて参照してほしい。企画立案そのものを外部の力で強化したい場合は、新商品開発コンサルへの依頼ガイドも参考になる。
PB商品開発の流れ(6ステップ)
PB商品開発は、おおむね次の6ステップで進む。
- 企画・コンセプト設計:ターゲット、価格帯、差別化ポイントを整理し、商品コンセプトを固める。
- 委託先への相談・見積もり比較:複数の候補に企画意図を伝え、対応可能なカテゴリー・ロット・費用感を比較する。
- 試作・官能評価:試作品の味・使用感・パッケージ案を確認し、フィードバックを重ねる。
- 規格確定・契約:原材料、成分、アレルゲン表示などの規格を確定し、製造量・価格・納期を契約書に明記する。
- 量産体制の確立・食品表示対応:試作レベルの仕様を量産に耐える形に落とし込み、食品表示法に基づく表示内容を確定する。
- 発売・初速モニタリング:発売後の販売データを確認し、追加発注や改良の要否を判断する。
依頼から契約までの一次相談は電話・メール・問い合わせフォームで受け付ける委託先が多く、複雑な手続きを経ずに相談を始められる点は、PB商品開発の間口の広さと言える(※4)。一方で、試作からの品質調整には一定のやり取りが必要になるため、余裕を持ったスケジュールで臨むことが望ましい。
PB特有の契約論点:在庫リスクとブランド独占
PB商品開発でNB商品の取り扱いと大きく異なるのが、在庫リスクの所在である。PB商品の販売主体は発注側(ブランドオーナー)であるため、売れ残りが発生した場合の損失は基本的に発注側が負う。委託先のOEMメーカーはあくまで製造を請け負う立場であり、需要予測や初回発注ロットの設定を委託先任せにせず、発注側が主体的に検討すべき論点である(※5)。
もう一つの論点が、開発した企画・仕様の独占性である。競合他社に同様の商品が提供されることを避けたい場合は、契約時に独占条項を盛り込むかどうかを検討する必要がある。独占条項を求めると委託先の選択肢が狭まったり、費用面で不利になったりする場合があるため、独占性が本当に必要な商品かどうかを見極めたうえで交渉することが実務的である。
まとめ
PB商品開発は、物価高騰を背景とした需要拡大もあり、国内外で市場が伸び続けている領域である。PBとOEM・NBの違いを整理したうえで、ターゲット・価格帯・想定ロットを依頼前に固めておくことが、委託先候補との相談を円滑に進める第一歩になる。依頼先はOEM/ODMメーカーへの直接依頼、卸売業者・商社経由、商品開発コンサルの3タイプに分かれ、企画からおおむね6ステップで発売まで進む。在庫リスクは発注側が負う点、ブランド独占条項の要否は契約前に必ず確認しておきたいポイントであり、これらを踏まえて委託先を比較検討することが、PB商品開発を成功させる近道になる。
参考資料
FAQ