本文へ移動
旨味転生Umami Tensei
04Global Expansion海外展開

海外展開前に商標登録が必要な理由|冒認出願のリスクと出願のタイミング

執筆: 旨味転生編集部読了目安 約6分

海外への出店やフランチャイズ展開を検討し始めた段階で、商標登録は後回しにされがちです。しかし現地で先に第三者にブランド名を登録されてしまう「冒認出願」は実際に起きており、対応を誤ると現地での自社ブランド名の使用自体が難しくなります。本記事では、海外展開前に商標登録が必要な理由と、出願のタイミング・方法・費用を解説します。

冒認出願とは何か、なぜ海外展開で問題になるのか

冒認出願とは、自社がまだ現地で商標登録していないブランド名・ロゴ・店舗名を、無関係の第三者が先回りして現地の特許庁に出願・登録してしまう行為です。多くの国の商標制度は「先願主義」を採用しており、実際にそのブランドを使用してきた実績があるかどうかにかかわらず、原則として先に出願した者が権利を得ます。この制度上の特性が、冒認出願を誘発する土壌になっています。

特に中国では商標出願件数が急増しており、2021年の出願件数は約950万件と世界全体の52%を占める規模に達しています※1。出願数の多さは市場の活発さを示す一方、日本企業のブランド名が国内での知名度確立前に現地で出願されてしまうリスクの高さも意味します。海外展開の進め方全体については飲食店の海外進出ガイドでも解説していますが、商標対策は市場選定や進出形態の検討と並行して早期に着手すべき項目です。

商標登録をしないまま海外展開するとどうなるか

出店やFC契約の準備を進める段階になって、現地で自社ブランド名が既に第三者に登録されていることが判明するケースがあります。この場合、原則としてその国では自社ブランド名をそのまま使用できず、店名を変更するか、登録済みの第三者から権利を買い取る、あるいは異議申立てや無効審判で権利を取り消すといった対応を迫られます。いずれも時間とコストがかかり、出店計画の遅延に直結します。

FC展開でマスターFC・エリアFC契約を結ぶ場合は特に、契約の前提として自社が現地で商標権を保有していることが求められるのが一般的です。契約形態ごとの実務は日本食の海外FC展開|契約形態の違いと選び方で詳しく解説しています。現地パートナーとの契約交渉においても、商標権の所在が曖昧なままでは交渉力が弱くなるため、海外進出の現地パートナー選び方で触れているパートナー選定の前段階として商標の状況を整理しておくことが望まれます。

海外で商標登録すべきタイミング

商標登録は、実際の出店やFC契約の直前ではなく、展開候補国が固まった時点で着手するのが望ましいタイミングです。冒認出願は、企業の海外展開計画がまだ公になっていない段階で行われることも珍しくありません。SNSでの情報発信や現地企業との商談開始など、ブランド名が第三者の目に触れる機会が生まれた時点で、既にリスクが発生していると考えるべきです。

複数国への展開を見据えている場合、すべての国で同時に本格出願するのではなく、進出優先度の高い国から先行出願し、中長期的な候補国は動向を見ながら順次追加していく進め方が現実的です。

海外商標登録の主な出願方法

海外での商標登録には、大きく分けて2つの方法があります。

方法 概要 向いているケース
各国への個別出願 出願したい国ごとに、その国の特許庁(または代理人)へ個別に出願する 出願国が1〜2か国に限られる場合
マドリッド協定議定書による国際登録出願 日本国特許庁への基礎出願・基礎登録をもとに、1つの手続きで複数の加盟国を指定できる制度 複数国へ同時に展開・出願したい場合

マドリッド協定議定書の加盟国は114か国に及び(2023年2月時点)※2、主要な展開候補国の多くをカバーしています。個別出願より手続きが一本化できる分、複数国展開を計画している事業者にとってはコストと工数の両面でメリットがあります。

費用と期間の目安

個別出願の費用は国や依頼する現地代理人によって幅がありますが、マドリッド協定議定書による国際登録出願の場合、日本国特許庁への基礎手数料として9,000円、国際事務局への基本手数料として903スイスフラン、指定国ごとの個別手数料(例:米国388スイスフラン)が必要です※2。国際登録の存続期間は登録日から10年で、以降10年ごとに更新できます※2。

出願から登録完了までの審査期間は国によって差があり、数か月から1年以上かかることも珍しくありません。出店スケジュールの直前に出願するとブランド名を確定できないまま出店準備を進めることになりかねないため、余裕を持ったスケジューリングが必要です。

使える公的支援制度

商標を含む海外出願には、日本貿易振興機構(JETRO)が中小企業向けに用意している支援制度を活用できます。「中小企業等外国出願支援事業」では、外国出願にかかる費用の2分の1以内が助成され、商標の場合は1案件あたり60万円を上限としています※3。

また、既に第三者に冒認出願・登録されてしまった商標を取り消すための係争活動についても、JETROの「中小企業等海外侵害対策支援事業」で経費の3分の2(上限500万円)が助成されます※4。冒認出願の被害に気づいた場合は、自社だけで対応を抱え込まず、早い段階でJETROの相談窓口や現地の専門家に相談することをお勧めします。海外展開全般で使える他の補助金・助成金については、飲食店の海外進出で使える補助金・助成金でも紹介しています。

商標登録以外に確認しておくべきポイント

商標登録は現地でのブランド保護の土台ですが、それだけで十分というわけではありません。指定する商品・役務区分の範囲を実際の事業内容に合わせて過不足なく設定すること、現地語表記やロゴの図案そのものも別途登録対象として検討すること、FC契約を結ぶ場合は契約書内に商標の使用許諾範囲・期間・解除条件を明記することなど、複数の対策を組み合わせて初めてブランドの実効的な保護につながります。契約書の要点整理には、業種は異なりますが監修契約書のひな形・注意点で解説している契約条項の考え方が参考になる部分もあります。

まとめ

海外展開において商標登録は、出店直前に済ませればよい事務手続きではなく、展開候補国が固まった段階から着手すべきリスク対策です。特に出願件数の多い国では冒認出願のリスクが高く、一度先に登録されてしまうと取り戻すのに時間とコストがかかります。マドリッド協定議定書の活用や、JETROの外国出願支援・侵害対策支援といった公的制度も組み合わせながら、展開計画の初期段階で商標対策を組み込んでおくことが、スムーズな海外展開につながります。

参考資料

  1. 中国における悪意の商標出願問題 | ジェトロ
  2. マドリッド協定議定書による国際出願について(初めての方へ) | 経済産業省 特許庁
  3. 外国出願費用の助成(中小企業等外国出願支援事業) | ジェトロ
  4. 中小企業等海外侵害対策支援事業(冒認商標無効・取消係争支援事業) | ジェトロ

FAQ

よくある質問

冒認出願とは何ですか?
自社が現地でまだ商標登録していないブランド名やロゴを、無関係の第三者が先に現地の特許庁に出願・登録してしまう行為を指します。商標登録は多くの国で「先願主義」を採用しているため、悪意の有無にかかわらず、先に出願した側が優先される点が問題を大きくしています。
出店予定がまだ具体的でなくても商標登録すべきですか?
検討段階であっても、複数国への展開候補が固まった時点で主要候補国だけでも先行出願しておくことをお勧めします。冒認出願は自社の展開計画が固まる前に行われることも多く、「進出が決まってから登録する」という順序ではリスクを避けきれません。
一度に多くの国へ出願すると費用が高額になりませんか?
マドリッド協定議定書による国際登録を利用すれば、1つの出願手続きで複数の加盟国を指定でき、個別に各国特許庁へ出願するより手続きと費用を抑えられる場合があります。中小企業向けの外国出願費用助成制度と併用することで、実質負担をさらに下げられる可能性があります。
既に第三者に商標を出願・登録されてしまった場合はどうすればよいですか?
現地の異議申立制度や無効審判制度を使って取り消しを求める方法があります。日本貿易振興機構(JETRO)は、こうした係争活動にかかる費用の一部を助成する制度を設けているほか、専門相談窓口も用意しているため、早い段階で相談することをお勧めします。
商標登録すれば現地でのブランド保護は万全ですか?
商標登録は模倣・盗用対策の土台ですが、それだけでブランドを守り切れるわけではありません。指定する商品・役務区分の範囲設定、現地語表記やロゴの登録、フランチャイズ契約における商標使用許諾条項の整備など、複数の対策を組み合わせる必要があります。

Free Consultation

商品開発・業態開発のお悩み、
まずはご相談ください。

初回ヒアリングは無料です。海外展開のご相談は旨味転生へお問い合わせください。

無料でお問い合わせする

Start here

海外展開の基本記事

Related

Themes

テーマから探す